未確認飛行ファラオ

晴れ、時々ファフロツキーズ。

便乗ノスタルジア

https://reiza303.hatenablog.com/entry/2019/03/23/013645

 

まず初めに、上記の可視化された騒音のような記事を読んでいただきたい。

 

某インターネットサイコボーイの影響をモロに受けた書き出しはどううでもいい。

おそらく、似たような文章はインターネットの海を何艘も漂泊してるはずだ。

問題は本文にある。

 

 

フォロワーから「このおじさんはどう?」と声をかけられました。

その中にいたんです。

 

私のめ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ちゃくちゃ好きそうな無精髭成人男性が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

怖っ。

サイコヤンデレ系のキャラが獲物を見つけた時と同じことを言ってる。

 

この記事を読んで、私は生まれて初めて「テキストに殺される」と思った。

波濤のように荒ぶる波線。

満員電車内が如く乱立する感嘆符。

文字ではなく画像として脳に飛び込んでくる巨大文字。

 

『見る暴力』という表現が適しすぎているこの記事は、

私の知り合いである大学を留年した恋人いない歴と年齢が一致している既婚者おっさんキャラの強火夢女子という哀しきのモンスター(自転車に乗れず、親から揚げ物の調理を禁止されている)が書いたものだ。

 

 

  ↑ね、ヤバイっしょ。

 

文章から察してしまうと思うが、彼女は恐ろしく感情的な人間で、

感想や書評が一切参考にならないということで周囲では有名なのだが、

私はこのレビューがどうしても気になった。

内容ではなく、題材に惹かれた。

 

 

 

 『なろう小説』

 『小説家になろう』というサイトで無尽蔵に公開・非公開を繰り返している尊称なのか蔑称なのかよくわからない名前を冠したインターネット小説群のことだ。(たぶん)

ていうかみんな知ってるでしょ。はてなブログ見ててなろう小説知らない奴がいたら怖いわ。

 

かつて書店で働いていた私は、『なろう小説』の局所的超人気を知っていたし、

同時に電脳大海放浪者─インターネット・サーファー─でもあるため、嘲りネガティブな感想も感想も知っていた。(『嘲りネガティブ』って闇堕ちしたけいおん!でありそうな曲名だよね)

 

本に貴賤はない主義なのだが、評判と内容のせいでどうしても白眼視してしまっていた。書店員時代、なろう小説の主な購入者がヤバ中年男性ダサ垢抜けず少年たちだったのも原因のひとつだ。

そもそも、私自身が美少女キャラクターやハーレム展開を蛇蝎の如く嫌っているのもある。(『蛇蝎』って言葉、意味に対して字面がかっこよすぎませんか? 私が海外のオタクだったら右肩に蛇蝎のタトゥーを彫ってた)

 

けれど、苦手意識の根底にあるのは最悪すぎるファースト・インプレッションのせいだと思う。

──第一印象は、サイアクだった。。。

 

 

初めてこれと遭遇したのは高校生の頃で、中学時代の友人である球磨川禊のセリフをそのままパクった文章で弁論大会に参戦した猛者からその存在を教えてもらった。

ちなみに幼稚園時代からの友人だったのだが、今は疎遠になっている。球磨川禊のセリフをパクって弁論大会に参加するような人間だからだと思う。

 

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↑丸パクリされてしまった球磨川禊のカッコ付けた言葉。

当時の男子中学生はみんな球磨川禊に憧れたし、貝木泥舟にも影響を受けた。

 

 

当時から既になろう小説はエンタメの一種としてオタク・コミュニティの中で蔓延していて、SAOとかお兄様と共にマニアックな人気を誇っていた。

 

球磨川禊に憧れた男(命名)も多分に漏れずなろう小説やライトノベル、エロゲやニコニコ動画に傾倒していて、彼自身が表現者として活動していたのを覚えている。

私はそういったものに疎く、詳しく覚えていないのだが、球憧男(チォウ チォン ナァン)はカラオケや声真似をなんらかのサイト・アプリで発信したり、詩歌などをSNSで披露していた。

つまり、ハンドルネームに『猫』とか『骨』を付けるような典型的なオタクだったのだ。(『月』『猫』『兎』『姫』『夜』『零』などの中二的漢字をハンドルに入れるオタクがいっぱいいた時代だった。『猫姫 零夜』みたいな全部盛りのヤバハンドルを名乗っていた人も多分居たと思う)

壁とか殴ってたし、読書感想文の題材が俺の妹がこんなに可愛いわけがないっ!』だったし。

 

クオリティはともあれ、自分を表現することは良いことだと思う。

そんな彼のヤバい自己表現のひとつが件の『なろう小説』だったのだ。

 

内容は一切覚えていないが、ストーリーはよくある学園異能バトルものだったと思う。

スカした主人公がチートな能力を持っていて、その強さ故に学園の内外を問わず美少女・美熟女・美幼女に好かれるという、承認欲求と性欲を同時かつ手軽に摂取できるような内容だったと思う。なろう小説の半分がこのフォーマットを乗っ取っていると私は思う。(大偏見)

 

彼のなろう小説の中で特に強烈に覚えている事柄が二つある。

 

ひとつは主人公の能力名

当て字な読み方は刹那で忘れちゃったけど、

確か『無限に絡む回路』という名前だったはずだ。

 

高校時代の友人と『無限に絡む回路』ごっこをして遊んだ記憶があるので間違いない。

 

ただの回路ではない。絡むのだ。しかも、無限に

有限回路絡まれるだけでも面倒だというのに、

主人公の回路無限絡んでくるのだ。厄介なことこのうえない。

 

直訳するとインフィニティ・インボルブ・サーキットだ。

もうダメ。僕の負けです。

 

能力の詳細も忘却の彼方だが、おそらく当時流行っていたアンチ異能力系だと思う。

『無限に絡む回路』の元ネタは約十年の時が経過した現在でもわからない。

もしかすると、当時の彼が工業系の高校に通っていたことにヒントが隠されているのかもしれない。

 

もう一つ覚えていることは主人公の名前だ。

主人公の名前は永遠に忘れることはないだろう。

『猫姫 零夜』のような奇抜な名前ではない。中二的漢字も一切使われていない。

にも関わらず、私はあのテトラグラマトンを強く覚えている。

 

何故なら、そのなろう小説の主人公の名前は、

 

 

作者である友人の本名そのものだったからだ。

 

 

 

幼稚園児の頃から呼んでいた友人と同姓同名の人物が、

なろう小説の中で異能力を操り、美少女をはべらし、

無限に絡む回路と叫んでいる……。

 

返せよ!あの頃のアイツを返せよ!

幼稚園児の頃のアイツは、仮面ライダーごっこの際に

「俺、仮面ライダー ファイズの男版!」

と叫ぶような純真な子どもだったんだぞ!

※当時はファイズ放送開始前のCMで女性(真理)がファイズに変身するようなミスリードが用意されていた。

 

 

俺はアイツの感性を滅茶苦茶にしたなろう小説が許せねぇよ……。

陰日向でオタク談義に花を咲かせるモテない思春期少年のドロドロとした性欲と承認欲求を過剰に、ぞんざいに刺激し、成人式で配られたらその場で生涯に幕を閉じるようなヤバい小説を書かせたなろう小説が許せねぇんだ……。

 

その後、彼は自作のなろう小説を何遍も書いては消しを繰り返し、最終的にamazarasiのなりそこないみたいな陰鬱なポエムも幾つか綴った。

それが、最後に見た彼の『小説家になろう』の更新だった。

今はページすら存在しない。

 

なろう小説はキャバクラとか風俗に多分似ていて、多くの人間を怠惰の泥沼へと引きずり込む効果があるのだと思う。もちろん、泥中で花を咲かせる者も僅かだが存在しているはずだ。

彼が開花するタイミングはそれにズラされてしまった。

っていう被害妄想。

 

 

しかし、なろう小説の全てが悪いわけではない。

なろう小説は作品ジャンルのひとつとして評価されるべきだと思う。

むしろエンタメとしては最上級に難しい分類だろう。

常人が真似して書けるものではない。

 

 

私がゲームシナリオライターになってから初めて痛感したのが、

『褒めることの難しさ』だ。

恋愛ゲームにおいて最も重要とされるのは、文章力でも表現力でもない。

『ユーザーの欲求を的確に刺激するか』である。

 

恋愛ゲーム及び、美男美女が登場するゲームのユーザーは特定のキャラクターから

『褒められること』『好意を寄せられること』

そして、『その関係が周囲に認知されること』を求めている。

 

つまり、対象からの好意と承認だけでなく、三者からの承認すらも無意識に求めているのだ。

このような展開をゲームや漫画などで体験したことのある人もいるはずだろう。

 

この三つの欲求を的確に刺激するのは中々に難しい。

キャラクターを属性で語るのは主義に反するが、ツンデレにはツンデレの、ヤンデレにはヤンデレの適した欲求刺激を作者は行わなければならない。

この技術は文才の巧みさだけでは身に着かない特殊なもので、美男美女キャラクターと触れ合ってきた経験値と、ユーザーへの理解力が必要となってくる。一朝一夕でどうにかなるスキルではない。

 

一流のなろう作家はそこが巧いのだ。

自分のキャラクターの魅力と、ユーザーが求める欲求を刺激する方法。

彼らはそのふたつを完全に理解している。

 

 

 

やはり、本に貴賤は存在しない。

なろう小説だろうが、ゴシップ誌だろうが、

その道のプロが一流を目指して作っているのだから。

それは貴いものだろう。

 

 

とはいえ、私がなろう小説に熱中することはこれからもないはずだ。

寿司屋にステーキは置いていない。私は私の欲求を刺激してくれる作品だけを好んで摂取しようと思う。

私となろう小説とのわだかまりは、未だに無限に絡んだままだ。

 

 

P.S.よく考えると一番悪いのはなろう小説じゃなくて、彼が中二的マインドに目覚めたきっかけである『戯言シリーズ』とそれを勧めた僕が悪い気がします。

 

 

 

 

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社文庫)

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